アニエス・トゥルブレ 「私の名前は・・・」
アニエス・トゥルブレ の 「私の名前は・・・」2014年
ひとこと:あの有名ファッションブランドのデザイナー、アニエスベーさんの監督映画です。本名アニエス・トゥルブレ名義です。
概要:性的虐待を父から受ける娘が家出し、トラック運転手と旅に出る。
みどころ
①少女とトラック運転手が心を通わせる様子が旅の爽快感とともに描かれる、映像美。レストランに行ったり、スーパーに行ったり、森の中を歩いたり、歌ったり。非日常感。時々出てくる、コラージュのような編集。
②最後
感想 (ネタバレ防止のためぼやかして書いています。)
とにかく映像がきれいです。ストーリーとあまり関係ない人も出てきますが、すべて芸術として、作品として美しい。主演の少女の表情も含めて。最初と最後以外、旅のシーンは、もう一度みたいです。あの美しさが、結末を際立たせているのだと思いますし、あの結末に様々な惨さが現れているのだと思いますが。
最後、なぜ?と思ったのですが、少女を守りたいと同時に、亡き娘のために犯罪者にもなりたくなかった彼はああするしかなかったんだと思います。でも、あの方法が(つまり明るみにならないことが)少女を守ることにつながるという構造がもう辛いのです。
ああ、それだけあの事実が持つ意味は重いのだ、語られえないのだというのと、突然の結末にびっくりしたのとで、泣いてしまいましたが、やっぱりこの映画の見どころは映像と二人が心を通わす様子と旅の非日常感、つらい現実にあった逃避行的時間・思い出にあると思います。
アニエスベー自身は、真実は何か分からないというテーマだったようです。
無言の壁。
語られえぬ真実。
語られえないからこそ守られるもの。
少女自身が沈黙し、その沈黙が彼に沈黙を強制した。
最後の独白からすれば、トラック運転手の最後の行動は少女にとってよかったのかも。
だから悲しくてやりきれないんですけどね。